唇の漏らす言葉のうた/秋葉竹
 

 

なにが正しいのかがわからなくなって
ただ黄緑の唇から言葉を漏らすだけになる

そういえば昨日のことさえまるで
想い出せないことが増えて来た
忘れられないひととの会話ややり取りが
切ないくらいに甘い追憶になっている

この身に降りそそぐ月光だけが
アルコールよりも涼やかな酔いを
胸に沁み込ませてくれるのは
たとえようもなく寂しい冬の夜だからか

知らない知らないなにも知らないと
首を横に振りつつ頑なに目を閉じて
甘美で綺麗でやさしいノクターンに
くみし抱かれて深い眠りにつきたい

なにが正しいのかがわからなくなって
ただ紅の唇から言葉を漏らすだけに
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