批評しましょ[322]
2004 11/16 21:59
一番絞り

http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=4402



4つタイヤがあって

ぶうっと、
走る


これはボルカさんの作品です。
ボルカさんがこのフォーラムに投稿されたさいしょの詩です。
べつにこれといってどーってこともない、衒いも気取りもない詩です。
読んでおもしろいかと問われれば、
うーん、....
わたしが鈍いせいかもしれませんが
とくにおもいきり感嘆するほどの詩ではない、でしょう。
ただ、この作品は、わたしにとって「いいところ」が、ふたつばかりあります。
それは「短い」ことと、「わかりやすい」ことです。
ごかいしないでもらいたいのですが、わたしが「わかりやすい」というのは
表面上書かれてある事がらを
字面とおり理解するのにそれほど苦労しないですむというていどの意味です。
でも、短くてわかりやすいのに、この詩を批評するとなると、とても難しいものを感じてしまう。
どうしてだろう。
たぶん、作者がある作品を「詩」として押し出すことのなかに、その難しさのみなもとがあるのではないか。
と、わたしはにらんでいます。(にらむほどのことではないですが)
たとえばどこにでもある道路の標識をもってきて、フォーラムに発表してもいいのです。
「題名:標識/作者:一番絞り/内容:横断注意」。
道を歩いていて「横断注意」という垂れ幕なり標識なりをみても、それを「詩」ではないと断定するのはたやすい。
(いや、ちがうな。まれに詩人はそれを「詩」と感じるかもしれない。それは一応棚上げということで)
しかし、フォーラムに発表された、たった一行の「横断注意」という作品を「それは詩でない」と決定するのは
なかなか骨の折れることだ。
まずもって作者によって「選択」が行われ、発表するという「決断」が行われている。
そして発表された「場」が時代の最先端をゆく「現代詩フォーラム」であるとすると....。
ひとこと。「あ」でも、やはり現代詩ではないか? ということになる。
あ、こんなことを言っていると、おまえは、なにをごちゃごちゃいうとんのやと叱られるかもしれないな。
そんなたわごとをいうてるひまがあったら、さっさと詩を吟味せんかいと。
「テクスト」を解読せんかいと。
このさいはっきりいっておくけど、わたしは「テクスト」なんていうコトバは決して知らないのです。
いまのところ決して知る必要にも、せまられていないようなんです。
「シニフェ」だの「シニファン」だの「エクリチュール」にも興味なし。
わたしはあくまでも詩の作者と詩作品と詩の読者(わたし)を直線でつないだ批評しかしたくないし、それ以外のやりかたは
いまのところわたしには考えられていませんのです。ご容赦。
で、なにをくどくどしゃべっているのかというと、じつは有井泉さんが詩について、こういうものは詩とは認めませんという発言をした。

《詩の最終行に「と思う今日この頃でった」という一行を付加して、成り立つものは、詩ではありません。>>>>163

この発言に、少なからずはんぱつがあった。
>別に詩である、と他者に認められようが認められまいが
>いっさい気にする必要はないと思います。
というような怒りの声もかえってきた。また、
>誤解を受けやすい言い方をしているとは思いますが、
>これが詩でこれが詩じゃないと区分して非難するのが発言の本意ではなく、
>詩の言葉、というものをもっと大切に扱いましょうという、提言であると、
>俺自身は把握してます。
と有井発言をフォローすることばもあった。

しかし、果たして、そうだろうか?
「題名:標識/作者:一番絞り/内容:横断注意」。
という詩がべつに他人に認められようが認められまいがいっさい気にする必要はないのだろうか。
詩でないとか詩であるとかいう区分はないのだろうか。
わたしたちが詩を書くとき、素朴に「詩とは何か」なんてことを考えていないのだろうか?
いや、そもそも「詩」を書こうとして「机にむかう」ときにすでにしてそれは考えられているからわたしたちは
「詩」を書けるのじゃなかろうか?
詩を書く行為のなかに、すでにして「詩とは何か」があるはずだ。
べつのことばでいえば「詩でないものとは何か」が必ずあるはずだ。


(ビールの酔いがまわってきたので、《つづく>>)

だから、みなそれぞれ「おれは詩ってものをこう考える」
「あなたはそういうものを詩とおもわないけど、おえはこういうものを詩とは思わない」
そいう議論になればよかったのだろう。
ところが「なんでも本人が詩といえば詩なんだ」みたいな感情的なところに走った。
冗談ではないでしょう。
なんでも詩だと言えば詩なら、詩はそこで水溜りのように死んでしまいますよ。
成長も発展もない。べつに成長も発展もなくてもいいけど、詩の新鮮さというものは確実になくなる。
有井さんはあえて、勇気を出して詩でないものに言及した。それは大事なことです。
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