水没
たもつ


波はもう台所まで押し寄せている
娘はバシャバシャ水を蹴りながら
学校の仕度に忙しい
妻は膝まで海水につかりながら
朝の牛乳を温めている
もしもの時のために集合場所を決めておこうか
と言うと
家族だから大丈夫よ、と答える
大丈夫かどうかはあるにしても
間違いなく僕らは家族だ
冷蔵庫に海鳥が一羽とまる
かもめ、そう言った時
妻も娘も他のところを見ていて
気づかなかった



自由詩 水没 Copyright たもつ 2007-01-04 18:27:30
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