霧雨の夜に
ブライアン

霧雨の夜に、歩道橋の上で見た淀む街は幻のようだった。
息絶えた夜の、ぬめっとした幼い声が聞こえてくる。


 修学旅行の記念写真。 片腕の小さな幼馴染。
 3tトラックが走る過ぎる風の振動で揺れる歩道橋。 
 もう見えない同級生を野次る。羨む。 
 片腕の彼女。

 野次られ、羨まれた同級生一同。 
 反発と反感で
 知っている限りの悪態と悪口に囲まれた片腕の彼女。
 いつまでも変わらない 赤信号の交差点。 
 

霧雨の
午後10時の商店街。
自動販売機だけが光っていた。

時間の四隅で
記憶だけが置いていかれる。
今だけが日常であるかのように。


 悪態をつき返した、片腕の幼馴染の、
 辛辣な手紙を受け取ったのは、
 もう見えない記憶、中学校最後の冬休みだった。


自由詩 霧雨の夜に Copyright ブライアン 2007-01-04 14:00:24
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