きみ (連詩) (2/2)
アンテ


きみ

        (2000.11.19-12.31 @FCVERSE)


(1/2からつづく)





  めいわくなはなし


うしのいろを
かえられるなら
だんぜん ぴんくいろ
あなたがいいはって
いっぽもひかないので
とくべつ
うしにこだわりはないけれど
それはあんまりじゃないかとおもって
いっしゅうかん
あれこれかんがえるうち
ぴんくいろもわるくはないかと
おもえてきたのに
いまさら
ぜんげんてっかいだなんて
それはあんまりじゃないかしら
けんかするうち
ばかばかしくなって
ふたりして
わらってしまった
どんないろになって
うしにとっては
めいわくなはなしだ


  くもり


さむいひ
がらすにかおをちかづけると
いきでくもって
むこうがわがみえなくなる
こうして
だきあっていると
たいおんのさで
おたがいがみえなくなって
きがつくと
じぶんとあいしあっていたりする
すこしだけちからをぬいて
ふたりならんで
ひなたぼっこをしていると
からだがすきとおって
なつかしいあなたがかえってくる
わたしは
どんなふうにみられているだろうか
おちつかないきもちが
ぶりかえす


  てんこんかん


あきかんを
あなたがたかだかとけりあげた
ほうぶつせんがおちてきて
こぅわぁん
ときみょうなおとがした
そらのむこうは
やっぱりそらだし
じめんのそこは
やっぱりじめんだ
へんけいしたあきかんを
わたしもけってみた
つまさきにあたって
なさけなく
てんこんかんところがった
とったものがち
よーいどんでかけだしたとたん
くらくしょんに
ふたりいっしょにしかられた


  すきとおってみえるということ


すきなこと
きれいなことをあつめるうち
たからばこのあきかんは
あっというまにいっぱいになった
そのたび
おいしくもない
どろっぷをかってきて
なかみをからにして
あたらしいあきかんをてにいれた
ほら
びんならすきとおっているから
みせあいっこできるよ
あなたのことばのいみを
りかいするためだけに
こんなにも
つきひをついやした


  きみょうな


もうにどと
だれにもかかわったりしない
こころにちかって
へやにとじこもっていると
そとから
きみょうなおとがきこえてきた
なんどもなんども
きこえてくるので
きになってきになって
がまんできずに
まどのそとをのぞきみると
あなたが
てをめちゃくちゃにふりまわしながら
まちじゅうに
きゃんでぃをまきちらしていた
いったいなにをしているのだろう
なんどよびかけても
こちらにきづいてくれないので
しかたなく
まどをあけたしゅんかん
へやじゅうが
きゃんでぃでいっぱいになった
あまいだけで
ちっともおいしくないのに
わらいがこみあげた


  ときどきおりてきて


たいくつなごご
うたたねをしているあいだに
あなたが
わたしのあたまを
ぽつぽつやまにつくりかえた
どこからともなく
ことばやうたがあつまってきて
ぽつぽつやまに
ぽつぽつふりつもった
くすぐったくて
ふとんのうえをころがっていると
いっせいにめがでて
ぽつぽつしたきぎがおいしげり
ぽつぽつしたみがなった
あなたはとりのこえをまねながら
きによじのぼって
みをつみとっては
おいしそうにほおばった
ときどきおりてきて
わたしにもたべさせてくれた


  とっておき


てんびんのこちらがわに
きもちやおもいでやたからものを
わたしがのせるたび
かたむかないよう
あなたはじぶんのこころからなにかをとりだして
はんたいがわのおもさをちょうせつする
おさらがひっくりかえったり
てんびんのうでがおれたりすると
またさいしょから
やりなおしてくれる
てんきがいいひは
てんびんからはなれて
おかのうえからまちをみおろしながら
たあいのないことばをかわす
ほらあのいえで
きのうこいぬがうまれたんだよ
ゆびさしたあなたが
こころにかくしもっている
とっておきのものを
どうすればひっぱりだせるだろうか
とぼけたふりで
とっぴょうしもないさくせんをねる


  ぽぷらのこみちを


ぽぷらのこみちを
はっぱをふみしめてあるくなんて
わたしにはできなかった
はっぱをかきわけても
かきわけても
じめんはみえなくて
こみちのまんなかで
とほうにくれていると
あなたがやってきて
わたしをひょいとかつぎあげた
ぴあののけんばんをたたくように
はっぱのうえをとびはねながら
こみちをつっきって
ちょうどよいあきちにたどりつくと
ほらよっ
とおろしてくれた
ひたいのあせをぬぐいながら
あなたがかたでいきをするたび
かぜがわきおこって
ぽぷらのはっぱをまいあげた


  あたたかいゆび


たまごのからを
こわさないように
こんこん
からをたたいてみる
みみをすませていると
こんこん
むこうからへんじがかえってくる
いとをてーぷではりつけて
そくせきでつくった
かみこっぷのいとでんわで
もしもし
どうしていますか
よびかけてみる
みみにこっぷをあてると
もしもし
きょうはほしがきれいだよ
おしえてくれる
にわへとびだすと
よるのやみに
かすかなひかりがまたたいていて
そっとてをのばすと
あたたかいゆびがふれる
もしもし
かみこっぷをにぎりしめて
ことばをまつ


  あなたのことば


あさいねむりのなか
あなたのささやくことばが
わたしのりんかくをこわすことなく
そっと
なかにはいってきて
てとりあしとり
からだをうごかしてくれる
このまままざりあって
あんなことや
こんなことを
ずっときょうゆうしていたいのに
ちらばっていたこころが
すこしずつもどってきて
これもちがう
あれもちがうと
はらをたてながら
あなたのことばをかたづけてしまう
それでも
にぎりしめてはなさなかった
ほんのひとこと
ふたことが
ながいあいだにつみかさなって
わたしはいまや
あなたのことばなしでは
いきていけない





自由詩 きみ (連詩) (2/2) Copyright アンテ 2007-01-03 09:55:52
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