創書日和「紙」 絮紙 −jo shi−
大村 浩一

(『ゴゲンナンゴ』
 なんでスッテ)

(『語源難語』)


名前ノ由来ガ分かラ−ナい
沢山の名前ヲ印シテ来たモノなノニ


絮(jo)トハ蔽緜(heiken)ナリ
即チ繭屑(まゆくず)ノ事デ
絮ノ懸濁液ヲ簀(す)デ漉キ取リ
繊維ノ薄層を乾カシテ出来タものニ
「紙」(shi)ノ字ヲ当テた


倭−言葉で“kami”と呼ばレタノ斑鳩
木簡のkanカラ転じタモノか
樺の樹皮kabaガ
kabi
kami
トなッタモノか
わ・くわ……
わ・きゃ・ラな……          ※
(アんナニ沢山ノ名前を載せテキたノニ
 自分でハ自分ノ名前の理由モ分カらナイ
 只ヒタスら真っ白デ……)


分からナイコとガアる
ナンテコと
想像モ出来ナカっタ
皆ンナ誰かガ
キット知っテイルもノダト


(名付ケラレタものト
 名前とノ関係は恣意的デアる
 なんテ
 駄洒落ヲ否定シタミタいで
 ゴメンナサイ)


絮紙ノ繭屑ガ麻トナリ
帋(shi)或イハ蔡候紙ニ成ッタ時
文字ハ甲骨ニ刻ムものカラ
誰モガ好キニ描くモノにナッタ
沢山の名前ヲ印シテ来た
沢山の名前ヲ印シテ来たモノ


うワゴト
taku山たクサんあッテ
うれしイ


どうか
セカイが
このテガミみたく
簡単ニ燃エ尽きマセンヨウに


「燃えるtextノ、ろごデシタ」
「燃えるtextノ……」



※ 萩尾望都『銀の三角』より

2006/12/29
大村浩一


自由詩 創書日和「紙」 絮紙 −jo shi− Copyright 大村 浩一 2006-12-29 20:50:20
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
創書日和、過去。