えらい えらい
草野大悟

ご用納めの日
いつものように
あなたのいる病院に行く。

いつものように
ねじまがったスプーンを
ふたりで使い
あなたの口に
夢を届ける。


あのね
今日、ご用納め
な〜んか
一年の疲れがどっと出た感じ


他の患者がいなくなった食堂で
ふたりだけで夕食をとりながら
喋る。

あなたは
そんなこと
どうでもいい
とでも言いたげに
ぼくが、近所のスーパーから買ってきた苺を
口を開けて待っている。


けっこう頑張ったと思うんだ今年、ね、ね
けっこうやってると思うんだ、おれ


苺をあなたの口に運びながら
喋っていると
拘縮したあなたの手が
ゆっくりゆっくり
ふるえながら
ぼくの頭まで伸びてきて
えらい
えらい
と、ささやくような
ちいさな声で
ぼくを撫でてくれた。




自由詩 えらい えらい Copyright 草野大悟 2006-12-29 15:16:57
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