ピアノのコビト
あおば

画面から
音楽が聞こえると
文字のコビトが
囁いて
画面に文字と書き込んで
そんなことないよと
笑われて
苦笑してから
画面の下を覗いたら
ピアノのコビトが佇んで
今か今かとタクトの合図を待っていた
セラミックスピーカからの
冷たい音を聞きながら
液晶画面に住むコビト
身体が薄いので強い音は出せないと
寂しそうに呟いて
ピアノのコビトを誘って
古い画面に消えてゆく
画面のコビトが消えたので
今来たこの道も
ピッタリと塞がれて
薄い大地に日が昇り
真一文字に描かれた
文字の姿の風が吹く
画面の下に隠れてる
文字のコビトが殺されて
ピアノのコビトが泣いている
走り出したセラミックスのスピーカー
薄い背中のコビト達
大きな声の持ち主と
喧嘩するほど強くない
風のコビトに殴られて
声も出せずに倒れてる
朝の光の振る道に
真一文字に寝かされて
冷たい冬の音楽を
身体の芯まで聞かされて
薄いからだが冷えてゆく
音楽聞いたら声を出せ
低い声も出せなくて
しわがれ声で文字を読む
緑のコビトも殺された
ピアノのコビトが音にした。

過去形のはなしが終わり
緑のコビトが蘇り
薄いコビトが目を覚ます
薄い身体は冷えたまま
ピアノのコビトの音を聞く。


自由詩 ピアノのコビト Copyright あおば 2006-12-29 11:39:26
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