バタフライして死のう
しゃしゃり

夢のなかで、
女にふられたので、
冬の海で、
バタフライして死のうと思った。
目が覚めて、
ああよかった、
わるい夢だった、
と思ったのに、
やっぱりそれは、
夢じゃなかった。
俺はふられた。
嫉妬に苦しみ、
布団でジタバタバタフライする。
大体、
バタフライの意味がわからない。
速く泳ぎたいならクロールすればよいし、
遠くまで行きたいのなら平泳ぎすればよいじゃないか。
なのになぜに、
バタフライなのか。
人生はバタフライなのか。
それはオリンピックの陸上に、
欽ちゃん走り百メートルがないのと、
おんなじなのじゃないのだろうか。
どうして俺は愛されなかったのか。
あと少しのことだったのか。
階段をのぼる神話のギリシャ人のように、
つい振り返ってしまったのだろうか。
どっちにしろ最終回なのだけれど。
ジタバタジタバタしても、
どこへも行きつけはしない。
シブがき隊はもう紅白には出ない。
赤組のトリが美輪明宏で、
白組のトリが和田アキ子でなければ、
もうテレビは見ない。
こんな話に付き合ってくれてありがとう。
明日は寒いとラジオが言っている。
俺は朝までバタフライだ。
そしてどうしても、
明日までたどりつくんだ。
欽ちゃん走りでね。
バタフライでね。
意味不明だよ人生は。
それでも明日はくる。
また誰かを好きになる。
失敗はない、ただもう、死んじゃいたいくらい、
好きになるだけさ。
焼酎のお湯割りをつくって寝よう。
せめて夢の機能を果たす夢を見ますように。





自由詩 バタフライして死のう Copyright しゃしゃり 2006-12-28 21:28:23
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