月が泣く夜に
なかがわひろか

月は泣く
また一人だけ
真っ暗闇に照らされて

遠い遠い昼間の
あの太陽へ

手を伸ばせども
届かない
もし辿り着いても
か弱い彼女の体はきっと
丸焼けになってしまう

遠い人を想いながら
彼女はまた今夜も泣いている

太陽は
ありったけの光を
彼女にぶつける

そこには全てを燃やし尽くす
本当の愛があった

交われない
すれ違いの生活

もう何年も何年も
お互いを見詰め合ってばかり

だけど
彼が見つけてくれた
ただの石ころのように
宙に浮いていた彼女を

彼が照らしてくれた
青白く時に赤く照れる彼女を

永久に交われないジレンマ
肌を重ねあうことのない
二人は

こっそりこっそり
泣いている

(「月が泣く夜に」)


自由詩 月が泣く夜に Copyright なかがわひろか 2006-12-28 19:00:31
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