雪よ 舞え
松本 卓也

灰色を塗りこんだ
空しい心の底に
降れよ 積もれよ

与えてくれた言葉
忘れたわけじゃない
閉ざしていた扉
少しだけ開いてみせたのは
君だったのだから

問うてくれ
責めてくれ
ほんの少しでもいいから
色を塗り替えるきっかけに
戸惑う心を開いて

本気の声を響かせて
偽りでない証を示してくれ
寒さは身を震わせるだけじゃなく
刻んだ言葉の溝を埋めるものだから

中途半端な温度で狂う風に
君と言う意味を与えてくれれば
昨日より確かな生きる価値を
今日に刻む事ができるはず

逃げないで
向かっていって
待つだけが全てじゃない

放った声が切り裂いた空っ風
形作った結晶に息吹を与えて
天を舞う風になれ

すれ違うだけが生き方じゃない
存在を賭けるほどの意味を見出せなくとも
ただ涙で雲を覆うよりは
叫びを乗せた方が遠くに届くから

飛ばして 舞え 雪よ
遠く 近く 目の前で 彼方で
心に溶けて 熱を冷やし
雲に乗り 風を泳ぎ
響かせて 声を
刻んで 言葉を
後悔と 嘆きを
喜びも 悲しみも

ただ ただ
舞え 雪よ
中空を辿って
心に降り積もれ


自由詩 雪よ 舞え Copyright 松本 卓也 2006-12-27 01:02:58
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