白雪
かや

冬の朝のにおいだった
せいけつな萌芽だった
眩し過ぎるゆえ
疎ましくなるほどの

寒さは寂しさに似ていて
暑さのひゃくばい嫌い
おとうさん
おかあさん
そんな言葉では震えてしまう
指先がくう

なま臭い香りに浸かって
幸せだとうそぶくのはだれ
潰れた幼いほんのうが
声をあげて泣いている

おんながこどもじみた仕草で
幻想に甘えるとき
鏡の向こうの世界を
振り向かせてはならない
目を合わせてはならない
慰めてはならない
けして

雪を踏みしめる小指の痛み
しみる しみる嗚咽は
置き去りにしたつもりでも
さようなら太陽 と
白い光へ倒れこむ
反射する雪粒が
ぬるい体温で溶けた



自由詩 白雪 Copyright かや 2006-12-26 20:39:19
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