宝くじ当たる。
もののあはれ

宝くじに当たったよ。
3億円ゲットしました。

僕の生涯賃金を一瞬で凌駕してしまいました。
今までの苦労はなんだったのでしょう。
昼も夜も休み無く働いていたのはなんだったのでしょう。
慢性の胃潰瘍はなんだったのでしょう。
ストレスを他のストレスで誤魔化す生活はなんだったのでしょう。

嫌なことは大抵片付きました。
欲しいものは大抵手に入りました。

自転車からハーレーに乗り換えました。
満員電車から高級外車に乗り換えました。
アパートからマンションに移り住みました。
かび臭い布団からイチロー選手も愛用のベッドに買い換えました。
いっつも腹時計が鳴っていて恥ずかしかったから。
関係ないけどロレックスを買いました。
場末の居酒屋から高級レストランに行きつけを変えました。
下町のナポレオンから本物のナポレオンを飲む様になりました。
ブレンド米よりブランド米を食べる様になりました。
いつも頭を下げていた人に頭を下げてもらえる様になりました。

いよいよ僕も携帯電話を手に入れました。
知らない親戚から電話がよく来るようになりました。
懐かしい友人から会おうじゃないかと連絡が来ました。
色々な団体の方々から尊い寄付のお願いをされました。
よく分らないけれどカブトムシみたいにみんなが集まりました。
僕の毛穴から黄金色の樹液でも染み出しているのでしょうか?

ねえあなた達。
なんで僕の前ではいつもカラカラ笑っているの?
ねえあなた達。
どうしてあなた達の笑顔の向こう側が透けて見えるの?
ねえあなた達。
あなた達の脂っこい額に『欲』って書いてあるのはネタなの?

ねえ僕。
これが僕の望んでいた事なの?
ねえ僕。
これが僕の望んでいた事ではないの?
ねえ僕。
鏡の中の僕の顔がやけに歪んでて変てこなのは何故なの?
ねえねえ僕。
ところでどうして僕は宝くじに沢山の夢と希望を託していたの?

ねえ僕。
訳が分らないけど僕は取り合えず幸せという事でいいじゃないか。


ねえ僕。
それじゃあ駄目?


自由詩 宝くじ当たる。 Copyright もののあはれ 2006-12-22 19:53:31
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