午後の傷
木立 悟




凍り重なる足跡を
ざわめきは歩む
うつろいは歩む
こぼれては散る火の
ほころびを縫う


まどろむまぶたを照らす金色
崖の高さだけ離れたところへ
越えて 越えて 波は放つ
奥に抱えた星と岩の色


片方しかない拍手の音が
水のように降りそそぎ
地に根づき 砂へ砂へ
銀に 銀に のびてゆく


光沢 時間 置き去りの影
緑 緑 聴こえぬ涙
流れるさきざきに
血は結ばれてゆく
やわらかな ひとつの
握手のように


赤と黒
律儀な産声
指から指が去る痛み
ひろいあつめてふたたび指の
あたたかな雑を受けとるかたち


消えても消えてもそこにあり
いつもひとり鳴りつづけるもの
いのり ねがい 冷めた火の影
かすかにほころびをくりかえし
昇りながら降りながら
皆どこかに積もりながら
近くて遠いひとりを聴く















自由詩 午後の傷 Copyright 木立 悟 2006-12-22 13:59:58
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