午後の傷
木立 悟
凍り重なる足跡を
ざわめきは歩む
うつろいは歩む
こぼれては散る火の
ほころびを縫う
まどろむまぶたを照らす金色
崖の高さだけ離れたところへ
越えて 越えて 波は放つ
奥に抱えた星と岩の色
片方しかない拍手の音が
水のように降りそそぎ
地に根づき 砂へ砂へ
銀に 銀に のびてゆく
光沢 時間 置き去りの影
緑 緑 聴こえぬ涙
流れるさきざきに
血は結ばれてゆく
やわらかな ひとつの
握手のように
赤と黒
律儀な産声
指から指が去る痛み
ひろいあつめてふたたび指の
あたたかな雑を受けとるかたち
消えても消えてもそこにあり
いつもひとり鳴りつづけるもの
いのり ねがい 冷めた火の影
かすかにほころびをくりかえし
昇りながら降りながら
皆どこかに積もりながら
近くて遠いひとりを聴く