枯草
手嶋純
枯草を老人が畑で燃やし続ける
白煙が空へと昇る
冬の空は黒い雲が覆い、煙を呑み込む
竹薮で餌を漁っていた雉の群れが飛立つ
夕暮れは寒さだけを引連れてくる
寂しさが私の胸に込み上げる
あなたからの連絡もないままに一年がすぎてゆく
夏の胸を焦がした恋も幻だった
私はどうしても恋に恵まれない
あなたを最後の人と決めていたのに
私の恋は、また裏切られてしまった
もう涙を流すほど少女ではない
私の心も少しは逞しくなった
でも、新しい恋には戸惑う
優しく私を包んでくれる愛
幾つもの夜を数え、私は待ち続けるのか
遠くでイルミネーションが輝いている
私に嫌味なほど、明るい光を放つ
老人は畑から去り、焚き火が燻る
愛のない生活もいつかは慣れてしまうものだ
私は自転車を走らせ、家路へと急いだ
冬の夜は闇に包まれてゆくだけだ
自由詩
枯草
Copyright
手嶋純
2006-12-22 00:48:05