シガレット
六崎杏介

舞台、葬列を為すガス燈に架かる虹の円環
を射抜く牢獄。に、柊の苗木が抱かれている。
私は鋭利なifを取り出す。
しかし比喩苻の巣が樫の腕から昼を駆逐した。
錠が下ろされ、影の無い階段を昇る。ビロードのカーテン。

 「視界の一点を揺らす度
         肺臓を吐き出しているのだ!」

舞台、仰げば逃げ場の無い戦場に死に化粧が
累々と翻っていて、敗走部隊の空薬莢が燦々と
落ちてくる。目を落とせば蝋に閉じ込められた
火薬の上に、あちこち火が灯って暖かい。
剥がされた体温達が縛りつけられた私にピストルを向ける。
パチンパチン!芥子花火の弾ける音、ビロードのカーテン、喝采!

そうして、よれた巻煙草が一本
アスファルトに落ちていただけだった。


自由詩 シガレット Copyright 六崎杏介 2004-04-02 13:45:58
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