三つの詩について(2)ー「そんな毎日」・「遠雷」・「靴下売りと指人形」
生田 稔


★そんな毎日
恋情に就き密かに書き綴ったらしい。文章は作者の手を離れると独り立ちをするという、詩も例外ではない。
 新しい時間を目の前にしたとき
こどものように泣いてしまったら
そこからどうぞ
背中をそっと撫ぜて下さい
変わりつづけるものの中に
変わらない風のような手で と言う終連は何かと想像を掻き立ててくれる。全体としてよくできている、なかなか良い詩にめぐり合えなくてやっと見つけた一遍だけに貴重である。この作者のほかの詩は知らないが、リズムもバランスも良いのではないか。芙雨さん、さらに研鑽されんことを!
★遠雷
 西脇順三郎氏は簡単にわかる詩はだめだと言いご自身難解な詩を書かれた、この詩もちょっとそんなところがある、ただ西脇氏は難しい言葉を連ねて読者を幻惑するところがあり、それが難点と言えば言える。この作品は難語を連ねるという事はなく、遠雷と言うテーマを最後に明かしてちょっとすきっとさせてくれるのがいい。

遠雷がひとつ

つもりはなくても聞いてしまう
拒むつもりもないけれど
それゆえ距離が
気にかかる    こう言ってくれるのが、読者の共感を受け、さわやかに読む人はこの詩を手放すだろう.次作も期待したい。
★靴下売りと指人形
 いい意味でトボケとユウモアーのある作品。詩を作ることに慣れていられる。年末にふさわしいような気のするところもある。靴下売りというあんまりありそうもない行商人を待っていると言うsituationが成功したのであろう。老婆心として申し添えるなら、次作は趣を変えて新しい趣向にされるといい、いい才能を生かされて秀作を物されんことを。


散文(批評随筆小説等) 三つの詩について(2)ー「そんな毎日」・「遠雷」・「靴下売りと指人形」 Copyright 生田 稔 2006-12-21 09:54:22
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