行方
及川三貴

玄関に乱雑に置かれた
靴の形や方角を見つめていた
声が掛かってやっと靴を脱ぐ
冷たい床の歩数を数え
贈り物を掴んだ手が他人の様に
中の輪郭を酷く失わせる
飲めないコーヒーを玩びながら
エル・トポなんて観ていたら
眠りが押し寄せてきた
瞼の隙間からやって来る
固まった紫煙 
薄暗い片隅から
歯を磨く音が聞こえる
静謐なあなたの生きている証
頭痛 冴えない頭痛
横になって投げ出すと
窓の外の深夜 今にも
踊りだしそうに
髪を避けて額に触れてくる手 
目も観ずに影の後ろ 玄関の
靴の形や方角ばかり気にしている


自由詩 行方 Copyright 及川三貴 2006-12-21 01:25:22
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