飛んでゆけ
松本 卓也

零す理由さえない涙が
今にも溢れ出しそうだ

寂しさが生んだ衝動が
じわり と胸に広がる
生易しい感情に置き換えて
納得したフリをしても

何一つ分ってやしないのは
他ならぬ僕自身だから

虚偽に溺れて満たされる孤独と
ただ一人立ち尽くす人影を照らす月
どちらが温もりに近いかなど
分りきっているはずではないか

心を誤魔化した道化の遊戯
踏み外し奈落に転がり続ける
詠う歌に綴られた一片の言の葉が
全てを解き放って虚空に消えた

夢とか現実とかに意味は無い
ただ然るべき運命の委ねるまま
咆哮が突き抜けた軌跡の果て

撒き散らす唾こそが知っている
何をなすべきだったか
何を手放してきたのか

いつか自らの死骸を省みて
鎮魂の詩を捧げるのだ
昨日の僕がそうするように
明日の君がそうするように

行く末の先でただ吠えろ
流れる涙に意味を分けて
終焉に向かう道標を嘲笑い
予測不能な弧を描いて


自由詩 飛んでゆけ Copyright 松本 卓也 2006-12-21 00:35:28
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