【短歌祭】赤いつぼみ
容子
膨らんだ真っ赤な少女が綻べば真綿の雪に椿がぽとり
体内で春を待ちきれずに芽吹く血潮に染まった椿のつぼみ
花びらを散らさぬように雪の上そろりと歩くも染みが点々
赤い紅ひく母さんの寒椿、まぼろしを越えこの身へ宿る
払っても抜いても肢体に絡む枝、寒雨に晒せど花ひらく赤
教科書の「冬は命が眠る」など真っ赤な嘘だと椿を手折る
つらら針、未練を断ち切るかの如く置いてけぼりの気持ちに刺さる
両足をつたい滲んだ赤い雪泣いては染まる雪うさぎの目
かじかんだ凍った手足と裏腹に熟れたつぼみは少女を咲かす