【短歌祭】見知らぬ冬
石瀬琳々

霜葉ふむ皮のブーツの小気味よさこのままいつか見知らぬ冬に


窓ガラスくもる吐息にだまりこむ人のしぐさのその残酷さ


薔薇そうびあかい棘さす指先の血のにじむ孤悲こいするどく痛く


指と指触れあうあとの切なさは白緑色びゃくろくいろに沈むみずうみ


雪片が水にふれては消えてゆく記憶の湖面忘れるための


せつな刹那やさしく閉じて音もなく真綿のように雪は降りつつ


薄氷割ってさよなら砕けちる朝のひかりの白いくちづけ


はだかの手枯れた木肌に押しあてて泣くだけのことひとりごころは


かじかんだ指先つよくドアをあけそれきり一人見知らぬ冬へ




短歌 【短歌祭】見知らぬ冬 Copyright 石瀬琳々 2006-12-18 16:02:05
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薊道