すなはまにて
soft_machine

波にかき消され
あるく音も聞こえない
アヴェ・マリアもかき消され
カモメの白い羽音もかき消され
太陽をまっすぐに浴びて
誇らし気に弧をえがく

かすんでゆくまま波にかまれ
風船はつながれた糸をほどかれた
さびしい自由を転がって
いつか割れるか萎むかするのだろう
それまでの自由を自由と試すなら
なかば埋もれた甲羅のにおいや、叫び、夢
かすかに残る感情を、胸にぐっと押しつけた

 (ぼくは水平線を見たことがない)

 (それはいつの間にか水平線だから)

波にかき消され
風にかき消され
一匹の犬が
ひろびろとした単調さを駆け抜ける
大地と海とが交わるところ
あしあとは踵のあたりに
ひかりとかげが分離する






自由詩 すなはまにて Copyright soft_machine 2006-12-18 15:19:51
notebook Home 戻る