春夏秋冬
葉上一依

ある日、夏が冬から雪を盗みました
夏も雪を降らせたがっていたのです
だからこっそり冬を盗みました
冬はそのことに気が付いていましたが気付かぬふり
をしました

やがて春が終わり夏を迎えました
「よし、雪をたくさん降らせてやろう」
夏はワクワクして、楽しみでしかたありません
しかし、何日経ってもいっこうに雪は降りません
そのかわりに毎日毎日雨が降りつづきます
夏が盗んだ雪は、夏自身の暑さにすっかり溶けてしまい
みんな雨となって街に降り続いたのです
「どうして?僕も雪を降らせたかったのに」
雨に混じって夏の涙もたくさん街に降りそそぎました

それに気付いた少女が空を見て言いました
「アタシ、暑い夏が大好きなんだよ。それに寒い冬も大好き。
夏らしい夏が大好きなの。冬らしい冬が大好きなの。春らしい
春も、秋らしい秋も大大大好き!」

「僕に雪は必要ないんだね。僕には僕の良さがあるんだね」
みんなに嫌われているとばかり思っていた夏は少女の言葉に
すっかり元気を取り戻しました

次の日には雨はあがり雲一つない青空が広がりました
その年の夏はかつてない程の暑さが続いたそうです






自由詩 春夏秋冬 Copyright 葉上一依 2006-12-17 22:47:00
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