【短歌祭】シンビジウム・ホワイト・ラバー
ピッピ

ピッピだっけ?窓の隙間に北風がこぼれるような素敵な名前だ



なんで今日は羽根が開かないって、ああ、マイナスだらけの最低気温

君の目で体透かせば黒い部分のたくさん出来る季節がきたね

半年も使っていない扇風機が一瞬振り向いたような気がした

風殺す炬燵の向こうは死の季節どうぶつたちが死んでゆく季節

久しぶりに彼は笑った透明の吐息が白くなるだけのことで

ジオラマの無風の世界生ぬるい吐息送れば全てなくなる

今日よりも寒い日はないへたくそなハスキー・ヴォイス今だけゆるす

表面の凍った池の水中で魚は世界の氷河期を知る

はがされてきりきざまれて政治家のぽすたーみんな笑ってやがる

骨壷を持った子猫が病院へ訪れ「この人にあいにきました」

氷点下で点す火の故意に消したあとはただ静謐な熱になる

街中のマンホール開け屋上で師走の夜の悲鳴たちを聞く

コンビニに深夜行くってだけだのに勇気を試されている部屋の中

GOING UNDER GROUND大音量大晦日漫喫ヘッドフォンから

もうすぐで(オートミールに)ふりかかる(ミルククラウン)雪になる雨

帰っても一人なんだね言ってみた深夜のプリン売り場の前で

北国に居るとこの目で見る雪が世界を覆い被す気になる

制服来てローソンの壁に寄り添えば降ってる雪も味方にできる

あたたかいガラクタはない目が張って眠れないよと埋立地の上で

街灯のなくなった道何がクリスマスだペプシのプルタブあける

季節には似合わない色赤緑黄色人々歩いたり止まったり

若過ぎた 誰かの心を傷つけて通り過ぎてく颪のように

さかさまにおちる少女の夢を見たこれから何になればいいだろう



幻想はマッチを売った子のように独りの部屋に浮かんで消える

春のような笑顔を見せて君は死ぬいつか死ぬから僕も笑った

雪の精はかき氷器の内側で真冬に溜めた血を吐いている

間違って後ろの足で夏の日を踏んで壊していた冬の朝

夏、遠くのものが見える 冬、近くのものが見える鋭い世界



さよならを使わなかったよ 手を離すばかりの季節に取っといたから


短歌 【短歌祭】シンビジウム・ホワイト・ラバー Copyright ピッピ 2006-12-17 21:09:18
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