時間がとまる夢
なかやまそう

時間がとまる
夢を見た

異様にほそ長い
横断歩道で
信号待ちを
していると
視界の右上が
黒くかすむので
気になって
空を見上げると

だ円が崩れたように
一部そこだけ景色が
黒くやぶれていて
イチョウの葉っぱや
通行人や簡易トイレ
やバリバリのキャリア
ウーマンと呼ばれる
人たちやIT社長や
行楽シーズンを
楽しむ家族らが
すべてそこに
吸い込まれて行く

ぼくもそこに
吸い込まれたいと
思い近寄るのだけれど
その穴からは
ぼくをはじくかの
ような冷たい風が
はきだされ
苦しくて
押し戻される

世界は
銀色のイチョウと
冷たい風と
ぼくだけになり
時間がとまった
かのように
物音なにひとつ
しない静かで
冷たい一日となった

夢から醒め
日が暮れてから
自販機でジュースを
買いに外に出ると
誰ともすれ
違わなかったので
誰も居ない公園で
諏訪通り沿いの
イチョウ並木を
眺めていると

不規則に暗やみに
発色する葉っぱが
落ちてくる

きっと時間はまだ
とまっているのだと
今日は自分に
言いきかせてみる


自由詩 時間がとまる夢 Copyright なかやまそう 2006-12-17 20:06:45
notebook Home 戻る  過去 未来