山海通り
アンテ

Maunaは山
Kaiは海
だから
さしずめ山海通り

斜め向かいの家で
巨大な犬が柵の内側を徘徊していた
裏庭の木が
嵐の夜になぎ倒されてしまった
パイナップルの実が
茎のてっぺんに生えていた
生まれて半年だけ暮らした家
「It's a girl!」
の風船は
いつまでも天井から降りてこなかった

1997年10月
7ポンド13オンス
20-1/4インチ
2003年8月
22キログラム
115センチメートル

あと十年以上
二つの国籍を有しつづける
その時が来れば
自分で選択する意志が持てるらしい

名前の「り」は
Liの方がよかったね
Rはむこうの言葉には存在しない
広島から取った地名にも
Lが入っている

大きくなったら
絵を描く人になりたい
小さな犬を飼いたい
学校に行きたい

一緒に日本にやってきた
クリスマスツリー
テーブルと椅子
草色の模様がはいった食器
MADE IN
の表示はどこにもない
どこで生まれても
人は人

地球儀は小さい
ここが生まれた場所
ここが今住んでいる場所
手を広げた距離
回る 回る
まるで地球のように
勢いよく回せば
たちまち一ヶ月
あっという間に大人になれる

RをLに置き換えれば
名前の意味は「新芽」

パスポートをひとつ失う前に
いつか また
山海通りへ




自由詩 山海通り Copyright アンテ 2003-08-06 06:28:38
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
びーだま