弁当箱
時雨

それは、青い色の小さな小さなお弁当箱
荷物の整理、してたらね
思いがけず出てきて、
小さかったあなたを思い出した。


あなたは、初めての子だったから
『幼稚園生のお弁当』なんて知らなかった私は、
全く飾りを付けもせずに、
お父さんのお弁当を作るときに残ったおかずを
ちょこりちょこり、と
この小さいお弁当箱に詰めていて
あなたは、周りの子のキラキラしたお弁当が、
羨ましかったでしょうに
一言も文句も言わないで。

あなたの妹のカナがね
「ゆきちゃんちみたいにうさぎさんのやつ、いれて?」
そう言われて、初めてそんなものが売ってるなんて知ったのよ。

小食で、小さいあなたはひょろひょろしてて、
朝は、幼稚園に行きたくないと言っては泣いて
夕方は、まだ遊びたいから帰りたくないと泣いて
少しでも強くなって欲しいと願って入れた
あなたの好物、焼きそばだけは残さず食べて。



小学校・中学校は給食だったから、
高校生になったあなたのお弁当箱がね
この前ふ、と気づいたの。
お父さんのお弁当箱より大きいこと
それでも足りないと買い食いして、ちゃんと夕飯も食べて
デザートまで平らげて
当たり前だけど、大きくなっていって
だから私は年をとったのね。

こないだは、笑っちゃってごめんなさい。
あなたが珍しくしたお弁当のリクエスト
「焼きそばが良い。」
昔から変わらない物も確かにそこにあったのね。




まだまだ大きくなりなさい。
私の身長はとっくに超えたけど、お父さんにはまだ届いていないでしょう


自由詩 弁当箱 Copyright 時雨 2006-12-16 21:04:49
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