夕方になって
牛乳がないことに気づく

幸いスーパーは
わが家のまん前で
24時間ずっと
誰かが買い物をしている

まだ辛うじて生きているもの
死んで間もないもの
ずっと前に死んだもの

スーパーの棚に
行儀よく並べられた
たくさんの死骸を眺める

私の死骸は
いったいどのあたりの棚に
並べられるのだろう

私と大差ない年齢の死骸が
氷詰めになって
鮮魚のコーナーに横たわっている

もうずいぶんと
鮮度が落ちているようで
くすんだ色の額には
半額のシールが貼られている

出来ることなら
本来の値段のまま
誰かに引き取られたいものだ

牛乳のコーナーで
まだ若い男の死骸が２つ
膝を抱えて並んでいる

痩せた髪の長い男の
わき腹のあたりに手を伸ばし
鉄分とカルシウムを強化した
ローファットミルクのパックを取る

きょうは特売
１パック１５８円

私はまだ
生きている