つみとる
なかやまそう

会社のエレベータの
非常ボタンの隙間に
白くて小さな
花が茂っているので
摘みとりたかった
けれど
摘みとらなかった

非常ボタンを
押してしまいそうで

摘みとりたかった
けれど
摘みとれなかった

会社の会議室の
植木鉢に
白くて小さな
キノコが茂っているので
摘みとりたかった
けれど
摘みとらなかった

胞子が飛んできて
アタマからキノコが
生えて来そうで

摘みとりたかった
けれど
摘みとれなかった


今週も休日出勤
からのスタートだ

そういえば
12月に入って
一度も休んで
いないような気がする

働きすぎは
よくないけれど
休みすぎも
きっと体に
よくないのだと
いいきかせてみる

会社を出ると
あまりの寒さに
泣きそうに
なってしまった
宮益坂の歩道橋
あたりで大声を出して
ぼくの生を
思いきり
夜空にむけて
発したくなって
しまった


今夜半過ぎ
渋谷区の路上で
夜空に向かって
泣きじゃくる
中年男性が
奇声を発しているところ
通りがかった
警察官に
通行人の歩行を
妨げたとして
逮捕されました


ココロの底に
たまった言葉は
決して消化
されることはなく
ぼくのお腹は
気球のように膨らみ
こみ上げる言霊は
体内を熱す

おもわず
このぬかるむ
大地から浮かび
あがりそうに
なるので

このまま
しばらくは
この流れにまかせて
浮かんで
行こうと思う




自由詩 つみとる Copyright なかやまそう 2006-12-13 17:57:06
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