気狂い悪魔
なかがわひろか

気狂った悪魔は
迷える人を助けた
一つの戦争を終わらせた
地獄への討伐隊を編んだ

気狂った悪魔は
人々の恋路を促す
愛の矢を天使からレンタルした
人々はそれはきっと天使の仕業と
勘違いした

気狂った悪魔は
とにかくたくさんのいいことをした
正常な天使が行うよりも
たくさんの
たくさんの
いいことをした

天使達はいつも文句をたれていた
天使達はいつも神の言いなりになっていたから

気狂った悪魔は
天使の嫌がる仕事も
すすんでやるようになった
ほとんどのいいことは
気狂った悪魔が行った

天使達は堕落した
何もしなくても
いいことは毎日行われる
人々は誰も悪魔がやったなんて
思いやしない

天使達は遊び狂った

天使達は何もしなくなった

気狂った悪魔は
ある日突然
立ち直った

正常な悪魔として
立ち直った

気狂っていた悪魔は
通常の仕事に戻った

この世に天使は

いなくなった

神は下僕を失い
己のことは
己でしなければならなくなった

神は思い知った

自分が何もできなかったことを

天使達は遊び狂い
人々は天使を軽蔑した

そして
悪魔だけが通常の仕事をこなした

(「気狂い悪魔」)


自由詩 気狂い悪魔 Copyright なかがわひろか 2006-12-12 14:14:45
notebook Home 戻る