「 あたしは汚物。 」
PULL.
一。
あたし捨てられた。
だから流れてる。
この汚れた水の中を、
彼らと流れてる。
髪や肌には、
彼らがこべりつき、
凄まじい悪臭を放ってる。
ドレスは犯され、
彼らと化した。
彼らを身につけてるあたしは、
もう汚物そのもの。
二。
排泄され、
生まれた彼らは、
いつか母へと還る。
そう生まれついたもの。
排泄されず、
生まれたあたしは、
いつまでも母へは還れない。
そう定められたもの。
あたしは汚物。
ひとりぼっちの汚物。
排泄されず生まれ、
忌まれ疎まれ定められ、
誰からも愛されることもなく、
捨てられ、
母へと還れない。
汚物。
三。
暗い母を脱け、
果てへと着いた。
父はあたしを見て、
涙を流す。
止め処なく、
父は涙を流す。
だからあたし、
父の涙に流される。
父の涙の中を流される。
あたし流され流され流されて、
どこまでも流される。
そうしてあたし、
父の涙で、
洗い、
流される。
四。
あたし気がつくと、
打ち上げられ、
海辺にいた。
父の涙が、
優しく、
あたしを撫でる。
なんどもなんども、
あたしを撫でてくれる。
ずっとそこで、
あたし待ってた。
待って待って待って、
待ち焦がれて、
撫でられて、
あたし待ってた。
汚。
長い影が近づいて、
拾い上げられた。
「リカちゃん。」
きみはそういって、
あたしを抱きしめた。
了。