比重
ねなぎ

冬なのに雨が降っている
憂鬱な重さの朝には
傘を差しても跳ね返り
裾を汚して
靴に沁みる飛沫を気にして
重心の軸がぶれて
真っ直ぐには歩けなくなります

重さだけが
塗られていく

逆撫でるチャイムが
鳴り響いて
鼓膜の内側で反響します

室内は湿気に沈んでおり
朝なのに気分は晴れず
床が滑り
嫌な臭いが立ち込めて
人々の声も
どこか遠くに
霞んでいます

重さが
塞いでいく

黒板の前に立つ
誰かが何かを
喋っているのが耳につきます

並べられた机の上から
座らされた顔が
意識だけは
渦を巻くので
その内の一つになろうと
必死に取り繕っても
重心が定まらないので
不安定なままです

密度が重く
立ち込めて行く

あちらこちらで
囁き声が
ざわめいて散ります

視線を定めようと
机を睨んだりするの
ですが
比重を増す
窓の外の
雲の流れに
意識は溶けて
雨粒よりも細かく
冷たい比重では
声を出す事も叶わない


自由詩 比重 Copyright ねなぎ 2006-12-11 02:28:00
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