洞輝
木立 悟




互いに背を向け
曲がり またたき
空と波を
指おり数える
月が隔てる言葉たち


手のひらの海
無数の帆
とまどいは澄む
濁りのあとさき


透明でもなく鏡でもなく
そのままより広いそのままを
歪みとともに映すもの
器という名のみちしるべ
うつろという名の舟を見送る


砂浜に
水母の火がいて
朝の方を向いている
火は 孵らない夜を
海へ運ぶ


軌跡は
こだまに満ちている
遠い会話
油の虹
波が波に描く空


剥がれては落ち
空は冠
水のありか
深く 深く
さしのべられた曇りの手
せなの側に降りつづく
小さな羽を聴いている


舟の上で
言葉は朝と月を見ている
手のひらは凪にひらかれて
すべての帆に
すべての波に陽をあててゆく
踊るように 招くように
またたきながら














自由詩 洞輝 Copyright 木立 悟 2006-12-10 22:45:54
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