トレンディドラマ
モリマサ公

12時

「もうなにもかもやめる」といいながら
見た事の無い男がキッチンに立っていて
重力の関係かすこしだけ勃起していた
わたしはリビングでまるくなって泣きながら
声でいろいろな嘘をついているところだった
男はおおきなくろいかたまりになっておおいかぶさる
で指が二本わたしの顔の前に現れ口の中に入ってきた
胃の中のものがなにかきもちのわるい生き物になってぼろぼろと部屋の隅にこぼれていく
床がかたむいているのだ
何度か殴ると気持ちよくヒットしわたしは血を流し始めた
赤ん坊のすすり泣く声がしてそんなのは信じなかった
幻聴がはじまったのだろう
気が付くと顔の部分が画面にのめりこんでいる男の輪郭が
やさしいひかりにつつまれながらいすにすわっていた
このはちみつのようなものが空気
それを振動さして笑い声がきこえてくる


目が覚めてピクニックにいこうとすると家中の刃物が
忘れてきてしまったように
なんどさがしてもみあたらない
ここはどこなんだろう


12月10日



双子のベビーとヘイビーなスモール・キング
共有できているという強い思い込みの裏側にある
コミュニケーションの不在

キーボードがつめたくてひんやりしている
世界のいろんな部分がひんやりしてきれいなのがわかる
木の葉っぱや輪郭
みずたまりのなかのアスファルト
底にねそべりながら風に吹かれているような気分になる
あしがくさっているのがわかる ほねが見える
ほねの部分で空を指し示す
これは幻覚


「アートはコミュニケーションそのものだと僕はおもってるよ
もしもし?」
__________


というのを彼女の日記にかきこむ


自宅に地下があることにきがついてぼろぼろの階段をくだっていくと
たなのうえで1メートルほどの身長の成人のモンゴロイドの男がすわっていた
影の部分がほとんどで何色だか解らないがスーツを着ている
壁はやわらかくぶかぶかして腐っているようだ

腕の三本あるアルビノの少年と朝方の街を走っている
逃げていた
二人は恋に落ちているようだった
屋上のような場所でまっしろいまつげをみおろしている
わたしの背の方が15センチほど高い
声が聞きたかったが少年は喋らなかった
わたしたちはばらばらにならないようにてをつなぎながら走った


空全体をかくすようにおおきな黒い影が鳥のかたちでリズミカルに旋回する


2017年

今通っている小学校ではSがはやっている
みんないっていることが一分ごとに全然ちがくて
何人かに一人は常にバッドでそれはぐるぐるまわっている
教師やクラスメイトを本気で消そうとしてそれを何人かがおさえこんでいるよくある風景
駅ビルの本屋で村上春樹の最新刊を完読して帰宅すると
リビングで父が煙草を吸いながら「こっちみんじゃねえよ」と母にどなっている
床には母の髪の毛が散らばっていて母は髪の毛をはさみで切っているところだった
「ただいま」
家族という装置のもっとも残酷な部分は
そこが芥子の実ほどの愛のかけらもないがらんどうだったとしても
そのままの状態で時間の上を空間としてすべっていくことが可能だということだ
「おかえり」









自由詩 トレンディドラマ Copyright モリマサ公 2006-12-10 15:07:50
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