チェーレ 真珠の涙
石瀬琳々
チェーレ
君の長い睫毛から
真珠がこぼれる
チェーレ
あまりに無垢すぎて
僕はひとつもこぼさないよう
手のひらで受け止めようと
振り向きざま
君の髪がやさしくなびく
歌を歌っていたんだろう
その唇をやわらかく閉じて
君をふいに抱きしめたかった
花を無残に手折るように
チェーレ
君に触れると
泣き出してしまうのはなぜ
チェーレ
夢を見ていたんだ
僕はこのまま手をさし出して
君の涙で溺れてしまおうと
永遠に溺れてしまおうと
窓の外は雪
君の翻るマントの羽飾り
音もなく去ってゆく瞳に
涙の粒は凍りついて
君をずっと閉じ込めたかった
この白の中に埋めつくして