機械少女
haniwa

ある日松葉通りで少女を助けた.
少女はガラの悪い男に絡まれていたわけでもなく
落とし物をしたわけでもなく
道に迷って途方にくれていたわけでもなかったが
助けを求めており
僕はそれに答えた.

少女は大変感謝して
お礼にあなたにこれをあげます.
そういって右手を差し出した.
これはわたしのこころの部品です.
開いた手のひらには銀色のボルトがあった.

少女とわかれたあと,
僕はボルトをしげしげと眺めながら帰路についた.
どうみてもただのボルトだ.
こんな,なんの変哲もないボルトや
ナット,シャフト,歯車,そしてクランク機構
そういったものが有機的に組み合わさって
あの少女のこころは構成されていたのだろう
手に持ったボルトが急に重くなった気がした
あの少女のこころはだいじょうぶだろうか
ボルトのひとつやふたつ抜けても壊れないでいられるだろうか
こんなものでも
こんなものでも
少女のこころの
たいせつな一部なのだ

家に帰っていつものように
椅子にすわって一服をする
まだ銀色に光るボルトを眺めながら
そういえば
この椅子の背もたれのボルトが一本抜けてたな,
ということを思い出した.


自由詩 機械少女 Copyright haniwa 2006-12-04 01:46:44
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