断片
佐藤伊織
■1
知能は現象である
あるいは人間のような形として存在するのでなく
人間からなる社会の上に存在しているものを
知能と呼ぶ
■2
風は物だろうか
火は物だろうか
それは途切れるものだろうか
それは重いものだろうか
■3
目が覚めたら、小さな縫い目のない皮の袋に入れられていた。
数秒後死んだ。なんの世界だろう。
■4
絶対的に離れた空間にいるものに
会いに行く
■5
海に沈んでみよう
沈みあうのだ
暗くて見えない海に
■6
崩壊するのは
この建物の中身だろうか
硝子が光を影に
■7
朝が
じっとやってくるのは
隅っこに
隠れてカーテンを揺らしている
あの人のためだ
■8
爆撃機が頭上を通り過ぎるのを
新宿から眺めていた
透明な空だ
■9
ただ夜は囲いから逃れて
歩いていく
山羊の群れを連れて