断片
佐藤伊織

■1

知能は現象である
あるいは人間のような形として存在するのでなく
人間からなる社会の上に存在しているものを
知能と呼ぶ

■2

風は物だろうか
火は物だろうか
それは途切れるものだろうか
それは重いものだろうか

■3

目が覚めたら、小さな縫い目のない皮の袋に入れられていた。
数秒後死んだ。なんの世界だろう。

■4

絶対的に離れた空間にいるものに
会いに行く

■5

海に沈んでみよう
沈みあうのだ
暗くて見えない海に

■6

崩壊するのは
この建物の中身だろうか
硝子が光を影に

■7

朝が
じっとやってくるのは
隅っこに
隠れてカーテンを揺らしている
あの人のためだ

■8

爆撃機が頭上を通り過ぎるのを
新宿から眺めていた
透明な空だ

■9

ただ夜は囲いから逃れて
歩いていく
山羊の群れを連れて


自由詩 断片 Copyright 佐藤伊織 2006-12-03 15:15:33
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