うさぎ殺し
吉田ぐんじょう
がらんとしたうさぎ小屋には
冬の一等星みたく
赤いまなこが
ひかっている
かなあみに近づくと
わずかに薄荷のにおいがした
君だったろうか
呟いた息が白い
夜空には
おおぐまや
はくちょうがいると云う
ぼくはそんなもの
見たこともないが
大人がいると云うのだから
きっといるんだろう
夜の校舎に
時折ちらちら動くのは
誰だろう
淋しがって泣いてる
風が吹き
薄荷のにおい
そのうち全て
忘れてゆくから
すかすかの胸に
抱きしめたうさぎは
いとも簡単に
あんな風になって
それでおしまい