僕の初恋
愛心

僕がこの言葉を知ったのは十年前
五歳のときだった
近所に住んでいた
りんにいわれたことがきっかけだった。

彼女は僕の目の前で
めちゃいい笑顔でいったんだ
「あい・らびゅー」
僕は意味はわからなかったけど
彼女のいい笑顔と
不思議とひきつけられる言葉に
笑みを返した


家に帰り
母さんに聞くと
「それは好きな人に言う言葉ね
 誰に言われたの?りゅう」
「ひみつっ」
僕はそういって部屋に行った
顔が熱かった








僕は十五歳になった
凛とも仲が良かった
でもある日
つまらない喧嘩をしてしまった
謝ることもできず
うなだれながら家に帰ると
母さんから衝撃的なことをいわれた
「引っ越すよ!」

まっしろになった
とてもつらくなった

直に皆の耳にも
僕が引っ越すことが知れられた


時折凛は
僕の目の前で何かをいおうとした
凛を見ると離れるつらさで泣いてしまいそうで
すぐに目の前から逃げ出した




引っ越す日が来てしまった
見送りに来てくれた友達の中に
凛も混じっていた
僕は黙ってバスに乗り込むと
何も見ないように下を向いた

シャー バタン

バスが発車した
どれ位経っただろう
前の席で変な会話が聞こえた
「あの子なんのつもりかしら?」
「泣きそうな顔しながら走ってるわ」
僕が窓の外を見ると泣きそうになった

凛だ

凛が一生懸命走っている
何かいおうとしている
僕は窓を開けるとゴメンといおうとした
でも出てきた言葉は
「あ、あい・らびゅー」
僕は真赤になった
でも彼女は嬉しそうに笑うと
いってくれた
「みー・とぅ」




我慢の限界だった
涙が溢れていく
でも嬉しくて嬉しくて
顔は笑っていた


僕は窓を閉めると
声を殺して泣いた







最初で最後の初恋だった



自由詩 僕の初恋 Copyright 愛心 2006-11-30 20:48:43
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