奈落に咲く ★
atsuchan69

白い花弁に滲んだ色は、
褪めた肌の哀しみにも似て
わずかな岩の裂け目へと根をつけた
くらしの危うさを今も孕みながら
押殺した声の倹しい日々さえ底なしに
やがて崩れ落ちる恋に焦がれて

夢の儚さに立ち向かっては、
微かに残る花翳の匂い
望みなく咲かせた冬空に笑みを返し
吐息にさえ震えるたった一輪
可憐な花の凜とした姿は清々しく
温もりに潜ませた想いはひしと

燃えさかる紅蓮の甘き誘い‥‥
――ひとときの花嵐に、
あそばれては揺れる白い花の
たとえ奈落に咲いてさえ
美しきその刹那、
みじかくも艶やかに


自由詩 奈落に咲く ★ Copyright atsuchan69 2006-11-30 16:27:06
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