あい・らびゅー
愛心

わたしがまだ小さい頃
パパがお仕事に行くとき
ママが「行ってらっしゃい」
といってパパにちゅーをした
パパはちゅーされた後ママにいっていた
「あい・らびゅー」



あ・い・ら・びゅー?




なんてゆういみ?




わたしがママに聞くと
ママはホッペを赤くして
「すきなひとにいうことばよ」
と優しくいってくれた







す・き・な・ひ・と?






わたしは心の中で
すきなひと・・・・・・・
すきなひと・・・・・・・
何度も繰り返していた
そしてふと気付いた
りゅうくん!
わたしの近所の子だった
あのこにいったげよう
「あい・らびゅー」
りゅうくんは顔に
?マークをちらつかせながらも
うれしそうにわらった










それから数年が過ぎ
わたしも大人っぽくなった

パパもママもちゅーはするけど
「あい・らびゅー」
とはいわなくなった




ある日のことだった
片思いの幼馴染の竜と喧嘩をした
幼い喧嘩だった
でもどちらも謝らなかった
ひとことでいい
「ゴメンネ」
これだけでいいのだ

でもなにもいえず
気まずいままだった





気まずい日に慣れ
中学三年生になった頃
竜が引っ越すことを知った
わたしは慌てた
『謝らなくちゃ・・・・・』



竜の前に行くことはできた
でも謝る前に竜はどこかに行ってしまう
それが何日も続いた







そしてとうとう
竜と竜の家族が
引っ越してしまう日がやってきた
竜は何もいわずバスに乗った




バスが発車すると
わたしは反射的に追い駆けていた
『待って・・・待って・・・・・』
竜はわたしに気づくと窓を開けた





「あ、あい・らびゅー」





竜はいったのだ
わたしに聞こえるような大きい声で





わたしは走りながらいった




「みー・とぅ」






わたしは走る速度を落とすと
そこに立ち止まった





わたしは見た
確かに見た





竜の笑った顔に伝う涙を







自由詩 あい・らびゅー Copyright 愛心 2006-11-28 21:25:07
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