月桂樹よ太陽を呼べ
三条麗菜

あなたを待つ部屋で
私は時々シチューを作ります
その時は月桂樹の葉を
一枚入れておくのです

入れると入れないでは
香りもずいぶん違うのですが
あなたのいない部屋で
私は夢を見るのです

月桂樹の香りに満たされた
この部屋を
太陽の神アポロンが見つけ
私を愛しいダフネと間違えて
訪れないとも限らない

その時この部屋は
まばゆい太陽の光であふれ
私は声高く
あなたの名を呼ぶ
あなたの名を呼ぶ
太陽の光に乗って私の声が
あなたに降る
あなたに降る

あなたが外にいるのなら
太陽の下にいるのなら
私の声で
あなたはきっと
少しだけ温かくなる
その温かさが私です
あなたへの
私の想いです

でも残念ながら
アポロンは一度も
来てくれないので
私は一人分のシチューを
いただきながら
あなたの名を
そっと呟くだけですが

それでもシチューが冷めて
その香りが消え去るまで
私は夢の中で
まどろむことができるのです

あなたを待つ部屋で
私は時々シチューを作ります
月桂樹の葉を
一枚だけ入れて


自由詩 月桂樹よ太陽を呼べ Copyright 三条麗菜 2006-11-25 21:46:32
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