冷たい花
はな 

花瓶の中の水曜日は
ゆっくりとながれてゆく
水のように透き通って
ざらついた日々が
回覧板にぶらさがってる


今はビニールの袋に音もなくおさまっている
でもそれも
ちりぢりになったものを抱くように
ほんとうはどうにかまあるくしている


バスタブの中で
突然悲しみがふってくる
何だかわからないまま泣いていると
湯気の中でやけにくっきりと
縞模様が 
ゆれた


彼女の髪の毛の分け目や
飛行機の地鳴り
澄んでゆくいくつかの足音
大好き、と言った
小さな声や
つまらないお説教を聴く 
る、ら、ら、
柔らかくて優しい だなんて
このりんと鳴る冬の正面に立って尚
言うことはできない

る、る、




大好き と言った
でも
なんてなさけないんだろう
今ふってきたこの悲しみは
きっと だれかのが飛んできたのだ
だれかの悲しみが
わたしに降っているんだ


ながぐつが 風に揺れてる
花を摘んでいるきみ
何度もほほをこするきみ
わたしに歯を立てるきみ
ずっとおなじほうこうのまなざしでみつめること
きみはのぞきみして
笑った
とびらをむりやり閉めた
それでも
つめたいひかりから生まれる花びらが
隙間からあふれて

目にしみる




未詩・独白 冷たい花 Copyright はな  2006-11-21 20:38:44
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