ささやま ひろ

僕は明日引越しをする
仕事上の都合で

電車にて
片道わずか一時間半の距離
大げさなもんじゃない

なのに
こんなにも心が寂しいのはなぜだろう


それはきっと
あの少年に会えなくなるから


朝のホーム
小学校高学年と思われるその少年は
車椅子で電車に乗り込もうとしていた

駅員が二人
彼の乗車を助けている


凛とした振る舞い

あどけなさの残る笑顔

少しの卑屈さも感じさせず

傲慢さも見られない姿


ありがとう

駅員へのお礼の言葉と
微かな笑顔を残して電車の中へ

それぞれの一日が始まる


彼を見かけるようになって一年と数ヶ月

僕は毎日少しずつ彼から勇気をもらってきた

言葉を交わすこともなかったし
僕に出来ることといえば
一緒になった日に
車内で彼が人波に呑まれないよう
ただ踏ん張ることだけだったけど


思い通りにならないカラダ

思い通りにならない心

誰もが現実を見つめて

ただ前だけを向いて



今日も彼は凛としていた



さまざまな人生を包み込む駅



喜びも

悲しみも

善意も

悪意も

期待も

後悔も



すべてが交差して



もうすぐ

この駅にも雪が舞う















自由詩Copyright ささやま ひろ 2006-11-20 23:11:31
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