逆走
カンチェルスキス




 
 黒のシビックがガードレールに衝突して、
 道を塞ぐように停まった。
 フロントガラスと運転席の窓が割れ、
 皮ジャンの男がハンドルに頭を押し付けていた。
 血が流れていた。
 部活帰りの高校生が救急車を呼んだ。
 


 信号を待っていた。
 斜め後ろに立ってたのは自転車の女だった。
 パチンコ屋の工事はまだ終了してなかった。
 作業服の男が
 塗装途中の店内を出たり入ったりしていた。

 

 信号が変わると
 自転車の女が追い抜いていき
 駅に向かっていった。
 駅から人が歩いてくる。
 これから飲みにいくのかコンビニの前で
 コートの若い男と女たちが集まっていた。



 ラーメン屋の隣はカラオケ屋だった。
 一時間八百円と書いてあった。
 商店街のアーケードを抜けると
 信号が一つあって
 今度は止まらずに歩いていけた。
 


 歩き疲れた末に公園の滑り台の柱に触った。
 あの車が事故を起こしたのは
 自分から逆走したせいだった。

 救急車の音はもうやんでいた。

 熱が奪われていった。




自由詩 逆走 Copyright カンチェルスキス 2004-03-24 14:52:27
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