逆走
カンチェルスキス
黒のシビックがガードレールに衝突して、
道を塞ぐように停まった。
フロントガラスと運転席の窓が割れ、
皮ジャンの男がハンドルに頭を押し付けていた。
血が流れていた。
部活帰りの高校生が救急車を呼んだ。
信号を待っていた。
斜め後ろに立ってたのは自転車の女だった。
パチンコ屋の工事はまだ終了してなかった。
作業服の男が
塗装途中の店内を出たり入ったりしていた。
信号が変わると
自転車の女が追い抜いていき
駅に向かっていった。
駅から人が歩いてくる。
これから飲みにいくのかコンビニの前で
コートの若い男と女たちが集まっていた。
ラーメン屋の隣はカラオケ屋だった。
一時間八百円と書いてあった。
商店街のアーケードを抜けると
信号が一つあって
今度は止まらずに歩いていけた。
歩き疲れた末に公園の滑り台の柱に触った。
あの車が事故を起こしたのは
自分から逆走したせいだった。
救急車の音はもうやんでいた。
熱が奪われていった。