この街
船田 仰


知らないはずのない街でつぶやいて
信号がいちいちぼくをおしとどめる
かろうじて左手はまだ
ながそでの中で嘆く程度だ
ぼくを知っているきみならこんなこと
そんなことと言うんだろう
漂いかけるきっかけのようなものを
偶然だと
ねえ偶然だと


電子音がひびきわたり
知らないはずのない街には知らないであろう人がいっぱいで
わけもわからず工事現場のわきをすりぬける
いたいんだよ
溜息をためとく場所ってあるのか?
昨日すてた煙草のくろをおもいだす
はがれてもう
白かったけどね 
生意気なくちをきく小学生の軍団が
ころがってゆくのを見る
耐えられないくらい
ひとがおおい


川原にすわりこんで
夕方から夜を歓迎しては
つながることに安心したふりをするんだ
ぼくのせいなんだろ
君は明日もかわいいんだろ
ああ電子音がひびく
かあさんと約束したんだ
だから苦しめない
おかしいねえ
おかしいねえ
あんたが見つけたはずのこの場所では
ぼくはうまく息ができずに
街を認識することをつづけてる
知らないはずのないこの街を


自由詩 この街 Copyright 船田 仰 2004-03-23 22:20:48
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