時代遅れの男 〜はっとりんぽえむ・その2〜
服部 剛
携帯電話を持たず
運転免許は取らず
国家試験も受けず
やりたくないことには目もくれず
自分のやりたいことのみ精を出す
いかなる流行に流されず
いかなる派閥にも属さず
誰も踏まない足場に立って
のんきな鼻歌で幾多の失敗を笑い飛ばし
時代遅れな自分自身を引き受ける
彼は手塚治虫に倣う者
晩年描いた漫画の中で
火の鳥が羽ばたくまで
木の幹を登るオサムシのように
ひとすじに歩き続けた
彼はSHINJHOに倣う者
かつての「虎のプリンス」は
阪神の大金蹴ってN・YMETSに飛び込んだ
福岡で生まれ、北海道で日本一の胴上げされて
涙で男の花道を飾った
ただ一心に
「今日という日」を楽しむ彼は
自称「ニセモノ金次郎」
惚れた女にゃ逃げられど
婆ちゃん達には大人気
ハゲのかつらをかぶって馬鹿踊り
婆ちゃん達は腰抜かす
( 薪の代わりに
( いつも背負う重いリュックに入っている
( 一枚の透明な地図
( 彼が生まれる前
( 母の胎で眠りながら見た夢の中で
( 語りかける姿の無い誰かから渡された
( 古びた約束の地図