海の見える駅 〜江ノ電・鎌倉高校前〜
服部 剛

丘の上には 
幼子おさなごを抱くマリア像 
周囲で秋風に揺られ 
こうべれるススキ達 

丘の上から 
見渡せば 一面の海 
きらきらと日の光が踊る辺り 
気ままに浮かぶ無数のヨット 

丘を下ると 
海岸線を時速20キロで流れる 
日曜日の車の長い列 

歩道には 
手をつなぐ若いふたり 
追い抜いてゆく 
ひとり汗かくマラソンランナーの青年 


海に面した木造りの駅 
小さいホームに並ぶいくつかのベンチに 
腰かける人々 

携帯電話の画面をみつめる 
女の傍らに置かれた黒いケースの中で 
肩に乗り 弦を震わせ 
音を奏でる時を夢に見るヴァイオリン 

若い夫婦の間には 
ちょこんと座る男の子 
口よりも大きいサンドイッチをくわえてる 


踏み切りの音が鳴る 

「鎌倉行」の江ノ電が 
ゆっくりホームに入って来る 


車内のドアにもたれ 
走り始めた車窓の外 

きらきら光る海を背に 
波の上をねる
サーファーの黒い影 








自由詩 海の見える駅 〜江ノ電・鎌倉高校前〜 Copyright 服部 剛 2006-11-06 18:27:35
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