骸骨になりたい
しゃしゃり

きみのとなりを歩くとき
ぼくはガイコツになりたいのです
骨だらけの傘をさしかけて
あばらに雨が透ける
きみのふくよかなみみたぶに
ちらっと目をやれば
ぼくの目はがらんどうだから
ああなにもかなしくはない
からっぽの記憶
ただ傘をさしてふたりで歩く
きみが何か話す
ぼくは何も言わずに聞いている
聞こえないけれど聞いている
関節がきしんでちゃかちゃか音をたてる
ぼくの骨は白い
ぼくの骨は清潔だ
骸骨だから笑わない
つくり笑いも愛想笑いもない
ぼくがガイコツになっても
きみはなにも態度を変えない
ぼくの手をそっと握る
手の骨を
つめたい骨だ
ガイコツ嘘つかない
ぼくの骨はかたい
きみのかなしみはやわらかい
ガイコツに心はない
街を歩く
胸をはって
でもうつむいて
美しい女が笑いながら
ガイコツといっしょに歩いている
すれ違う人もみな
あ、骸骨だ、と思う
アタシも骸骨と歩きたいとみな考える
ガイコツになりたい
ガイコツは嫉妬しない
だれにやさしくしなくてもいい
いつどこで倒れても
ただの骨だ
触れられないきみの
かなしみのとなりを歩くとき
ぼくはそんなことを考えています







自由詩 骸骨になりたい Copyright しゃしゃり 2006-11-04 07:41:08
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