ベルベットの夜
銀猫

見覚えのない住所から
冬の匂いの封筒は届き
記憶の引き出しから
銀のペイパーナイフと
あらん限りの想いの欠片とを
わたしは交互に取り出す


かさり、と開くと
月夜の薄明かりのなかで
沈黙していた言葉は
冗舌になり
鈍く光り始める


十一月が語るのは
晩秋に燃える木々の葉や
夕刻の煙が目にしみることばかりで
肝心なこころについては
触れようとせず
蜜を絡めとるように
細心に温もりを求めても
忘れた、というように
静かにわらうばかり


冬を運んで来たのは
きっときみに違いない


星座の名前や
ベルベットの艶やかな闇など
語るのはきみに違いない




自由詩 ベルベットの夜 Copyright 銀猫 2006-11-02 22:29:24
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